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2006/12/22

ジョルディ・サバイ

サンタ・マリア・デル・マル教会にてヴィオラ・ダ・ガンバ(チェロの前身のような楽器)奏者であり、スペイン古楽界を代表するジョルディ・サバイのコンサートを聴きました。

彼はルネサンス、バロック音楽の分野で数々の素晴らしいCDがありますが、中でもフランス・バロック期の作曲家マラン・マレの生涯を描いたフランス映画「Tous les matins du monde」(めぐり逢う朝)の音楽を担当し、その大成功によって世界的な名声を手に入れた人物でもあります。

このコンサートは、今年生誕500年になる、日本にキリスト教を伝えたことで有名なフランシスコ・ザビエルを讃えたもので、プログラムはそれにちなみ、彼が生まれたスペインの古い賛美歌と、布教活動を行ったインド(ゴア)や、最後にたどり着いた地、日本の伝統音楽とが交互に組まれたものでした。

作者不詳の賛美歌でのジョルディ・サバイ率いる楽団の古い香りに満ちた質の高い音楽性、コーラス隊の完璧な調和と美しい声は、500年という時間を越えて、その時代を今に再現しているかのようでした。

ジョルディのヴォオラ・ダ・ガンバの音色は深い哀愁に包まれた完全に落ち着き払ったもので、また演奏以外のパートでは弓を振って楽団全体の指揮を執っていました。

そして東洋の伝統音楽の方では、インドの民族楽器サロード奏者を招いての作者不詳のインドの古い作品、また日本の伝統音楽では、日本から優れた和楽器奏者が招かれ、能管による「神楽囃子」と「乱曲」、尺八による「霊慕」、琵琶による「本能寺」などが演奏されました。

これらの日本の伝統楽器を生で聴くのは僕自身初めてで、それをこのバルセロナという地で聴くのは数奇な体験ですが、逆に「これが日本なんだ・・・」という感覚も強烈に感じたような気がします。

能管奏者の鯉沼廣行さんは、ソロ演奏しながらの客席後方からの入場、そしてプログラム最後には退場という演出でしたが、その演奏しながら歩く姿は、何やら五条大橋の牛若丸でも連想させるようなものがありました。

軽やかな装飾音と澄み切った音色がこの教会全体に響き渡っていて、演奏終了後の鯉沼さんへの拍手はとりわけ大きかったような気がします。

それにしてもジョルディ・サバイという人物、これだけの優秀な楽団員を率いる指導力、それにヨーロッパの古楽だけに飽き足らず、東洋の古楽にまで挑戦するというのは、ただならぬ見識の深さと好奇心、行動力の持ち主だと感じさせられます。

このような非の打ち所のない完璧なコンサートを見るというのはとても貴重な体験です。

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