現代作品紹介コーナーその1「海へ」
本日は現代音楽作品紹介コーナー、記念すべき第一回目です。
分かりにくいと思われがちな現代作品を分かりやすく親しみやすく解説していこうというコーナー。いかにマニアックさを醸し出さずにやっていくかというところがしばらくの間の課題(笑)。実は、簡単に曲分析も行おうと考えていたのですが書いているうち、恐ろしく長文になることが判明(汗)。ということで、シンプルな解説のみにすることにしました。
まず初回ということで僕の大好きな曲、武満徹作曲「海へ」です。
これは3つのバージョンがあり、Ⅰはアルトフルートとギター、Ⅱはアルトフルート、ハープと弦楽オーケストラ、Ⅲはアルトフルートとハープという編成。1980年作曲、武満後期を代表するものの1つですが、この時期の特徴として7thや9thの和音や時には純和音すら使用されており、しかし調性に捉われることなく自由で美しく、海のように深い響き(←座布団1枚!)が展開していきます。
3つの楽章に分かれており、全体を支配しているのは短2度→完全4度という音程関係。これはSEA(海)、要するにes(ミ♭)、e(ミ)、a(ラ)の音程関係で、旋律のみならずハーモニーにも現れ、この3つの音符の動きをお聴き頂ければ分かるとおり、穏やかな開放感のような響きがします。その雰囲気はこの曲全体の雰囲気に通じるものだと思います。ミ♭とラの関係、増4度(減5度)も重要な音程です。
またスペース・ノーテーション(音の長さを、次の音符までの距離で表す)のような記譜法も見られます。
Ⅱは僕の最も好きなバージョンで、弦楽パートはほとんどハープのハーモニーを補強するように使われていますが、単なる補強ではなく、ウマい楽器法によって、恐ろしくファンタスティックな響きが生まれています。
武満は日本の現代作曲家には珍しく(?)、希望や光のある作曲家だと思います。それは単なる楽観的なものではなく、様々な試行錯誤や困難を乗り越えた後の光とでもいったようなもの、とても精神性の深い光だと思います。
武満自身が語ったことですが、上行音形を陽、下降音形を陰ということを特に晩年意識していたようです。この作品にはそんな天にも昇るような輝かしい上行音形がたくさん現れますが、その光は「人間社会にはたくさんの辛いことや困難、様々な問題があるけれど、僕達は常に希望を忘れてはいけないんだ」というメッセージが込められているような気がします。武満が晩年にたどり着いた心境や、その暖かい人間性に触れるような思いがします。
おすすめCDは「武満徹・翼(Wings)」(ユニバーサルクラシック)、「黒い雨~武満徹の音楽」(マーキュリー・ミュージックエンタテインメント)など。特にこれまで現代音楽にあまり縁のなかった方におすすめの名作です。
武満徹☆
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